今回は、各地でポエトリーリーディングに燃える廣川ちあきさんにご寄稿頂きました。
「詩はライブだ!」と語る彼女の、力強い世界観にぜひ耳を傾けてみてください。
みなさん、こんにちは! 廣川ちあきと申します。教養学部の4年生です。
私は、「ポエトリーリーディング」や「スポークンワード・ポエトリー」とよばれる、詩の朗読ライブの活動をしています。
先日11月7日には、日本最大級の“詩の野外フェス”、「ウエノ・ポエトリカン・ジャム」でオープンマイク(※後述)に参加し、上野水上音楽堂の舞台でリーディングをしてきました!
ライブハウスで朗読?
ポエトリーリーディングの舞台は実に様々です。
私は、詩人ばかりのオープンマイクで朗読することもあれば、ライブハウスでバンドやヒップホップのアーティストに紛れてリーディングをしたこともあります。ブックカフェや、小型のアトリエで読むこともあります。
みなさんが「詩」と接するのはどんな機会でしょうか?
小学校や高校までの国語の授業で、教科書に載っている詩を“音読”してそれっきり、という人は多いと思います。「詩を書く」という行為にも、夢見がち、暗い、なんとなく気恥ずかしい、などの印象があるかもしれません。
今でこそ「朗読詩人です!」と名乗ってライブ活動をしている私ですが、この活動を始めるまでは私にもそんな前印象がありました。でも、今ははっきりこう言います。
「詩のリーディングってかっこいい、おもしろい!」
ポエトリーリーディングとの出会い
私がポエトリーリーディングと出会ったきっかけはいくつかあります。
2016年2月、学生短歌会の合同合宿に参加し、そこで知りあった学生たちの出演する朗読ライブに誘われて見に行ったところ、「かっこいい!」と衝撃を受けました。ほどなくして、知人から、スポークンワード詩人・小林大吾のCDをすすめられ、これまた衝撃を受けます。
そして、半年ほど情報収集や迷いの期間を経て、2016年9月、「朗読のオープンマイク」に初めて独りで訪れたところ、「おもしろい!」とその魅力にとりつかれ、以来足しげくオープンマイクに通うようになりました。
※オープンマイクとは……誰でも参加できる飛び入り参加型のライブ。当日エントリー制であることが多い。5分間や11分間など一人あたりの持ち時間が決まっており、自作の詩を読んでも、他の詩人の詩を読んでもいい。演説や懺悔、愛の告白をしてもいい。
どうしてそんなに衝撃を受け、自分でも始めてみようと思ったのか。
おそらくこんな理由だったような気がします。
(1)詩集の中の詩を静かに読みあげるだけでない朗読があるんだ
詩の朗読といえば、小さなホールで、椅子に座ったアナウンサーや俳優が、手に本を持って静かに名作を読む……といった印象しか、私にはありませんでした。ところが、私が見に行った朗読ライブや、朗読オープンマイクは、まず、会場がライブハウスという場所。これまで行ったことのない場所でした。
そして、その場で読まれるのは、ほとんどの場合、パフォーマー自身が書いた詩です。
大きな出版社から有名な詩集を何冊も出しているような人ばかりが詩の担い手ではなく、「普段学校に通ったり働いたりしている人が、普通に詩を書いて、リーディングをしている。」このことがまず、新鮮な驚きであり、「かっこいい」と思った一番の理由でした。
(2)声と言葉が、その時その場で直接頭の中に入ってくる
私はもともと、中学・高校時代から短歌や俳句をつくっていました。紙の上に書き、紙の上で読むという形式に慣れていたこともあって、朗読オープンマイクで「その時その場で初めて聞く詩」に接したときは、熱にでもうかされたような気分になったことを覚えています。
即興絵画を言葉で見ているような、とでも言えばいいのでしょうか……。真冬のベランダの風景、想像上の生き物との恋、名前のつけがたい感情。ライブで直接耳に入ってくる言葉が、心をつかみ、想像をかき立て、体感温度まで変えてしまうような、驚くほど大きな力をもつのです。それが、旋律や伴奏をもたない「声」だけとなれば、なおさら。そんな体験が、「おもしろい」と思った理由です。
(3)詩人ってこんなにいきいきしていたんだ
静かに淡々と語る人、感情を激しくぶつけるように読む人。読みぶりは一人一人さまざまですが、ポエトリーリーディングをする詩人たちはとてもいきいきしています。
自分の生活をありのまま語るにせよ、フィクションの物語を読むにせよ、そこには詩人その人の感情のうねりや生きざまが垣間見えます。
そして、他の詩人のライブを見るときも、おもしろければ声を上げて笑い、社会風刺がばっちりきまれば拍手をし(まるでロックバンドのギターソロがきまったときみたいに盛り上がることも!)、切々とした語りにはしんと耳を傾ける。詩人たちの「聞く姿」を見ていると、言葉を聞こう、楽しもう、味わおうという意志が伝わってきて、これもまたいきいきしているなあと、私は思います。
「私にもできそう」という大いなる勘違いだったということにしていますが、「かっこいい!」「おもしろい!」という気持ちに、心を揺さぶられたのはまちがいありません。
読んで、書いて、舞台に立っての繰り返し
「詩はライブだ!」と高らかに宣言しながらも、詩を書いてリーディングをするというアウトプットを楽しむには、それ以上にインプットも必要です。
ポエトリーリーディングを始めたことで、短歌や俳句だけを作っていたとき以上に、様々な詩型から学ぶことが増えました。現代詩の詩集や歌集を読んだり、詩誌を買って自分で投稿もしてみたり、あるいは日本や外国のポエトリースラム(ポエトリーリーディングの勝ち抜き形式の大会)の動画を見たり、はたまたヒップホップ/ラップのCDを買って聴いたり。
「異なるジャンルの知らない方法をもっと知りたい」「おもしろい言葉をもっと見つけたい」という思いで、探究しています。(探究、と言いつつも、純粋に読者やリスナーとして楽しんでしまっていますが!)
読んで、書いて、舞台に立って……それを繰り返しながら、新しい一篇を作っています。
リーディングは怖い。
最近は、ソロでのリーディングの他にも、“詩人とDJのユニット”を新たに結成して音源を作るなど、新しい試みを進めています。自分がこれまで思っていた以上に、ポエトリーリーディングでまだまだおもしろいことができそうな予感がしています。
ソロで読むときも、ユニットで読むときも、自分の言葉に最後まで責任をもって舞台をひとつやりきらなければならないのは、たった独りの私です。それを思うたびに怖くなります。
自分の価値観や生きざまをさらけ出してまで、そうまでしてやりたいこと、伝えたいことってなんなのだろう。まだよくわからないので、「そうまでしてやりたいことは、なんかわからないけど、確かにあるんだ」と思うことにしました。
その上で、ライブのたびに、自分のリーディングが今度は他の誰かの心を揺さぶる可能性がある、と実感できることは、小さいながらも強い希望になります。
ポエトリーリーディングを世界中の全員に好きになってほしいだとかはあまり思いません。まずはこの記事を読んでいただいた皆さんに、こういうことに心を揺さぶられる東大女子が一人いるんだなと思っていただけたらうれしいです。
そして、もし興味をもった方がいたら、私や私以外の詩人のライブや、オープンマイクに足を運んで、「あ、この人の言葉、おもしろいかも」「あれ、今までに感じたことのない気持ちだな」など、声と言葉で心揺さぶられる瞬間に出会っていただけたら、もっとうれしいです。
廣川ちあきブログ「アップルパイと塩むすび」
今後のライブ情報はブログで発信しています。
廣川さん、ありがとうございましたー!
完全に自分の世界をお持ちのようで、本当に素敵です。今後の活躍も、楽しみにしてます♪
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